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不死と絵画とわたしたち
藤野可織×赤坂憲雄×諏訪敦

2025年11月29日 2025年11月29日

公式図録「諏訪敦 きみはうつくしい」の刊行を記念し、画家・諏訪敦、小説家・藤野可織、民俗学者・赤坂憲雄の3名によるトークイベント「不死と絵画とわたしたち」を開催します。
文芸と民俗学の視点から、諏訪の作品を掘り下げます。
諏訪の制作は美術史や技法研究にとどまらず、歴史学や民俗学、臨床医学など幅広い分野のリサーチに基づいています。

今回の展覧会では、「食物起源神話」をテーマとした静物画シリーズを発表しました。
神や人の身体が作物や生命へと姿を変え、自然の循環の中で生が受け継がれていくという物語を題材にしたものです。この制作には赤坂憲雄が著書「性食考」(岩波書店、2017年)で論じた神話や儀礼への洞察が影響を与えています。また、藤野可織はこれらの静物画からインスピレーションを受け、短編小説「さよなら」を書き下ろしました。

本トークイベントでは、「古事記」に記された大気都比売神の物語や、中世の絵巻物「長谷雄草紙」に登場する鬼と美女の奇談など、諏訪の近作に引用や象徴として取り入れられた古典的なモチーフを手がかりに、神話や伝承から現代文学へと続く長い時間の流れの中で、諏訪作品の魅力をあらためて読み解きます。


■開催概要
日時:2025年11月29日(土)15:00〜16:30 ※終了後、サイン会あり

登壇者:藤野可織、赤坂憲雄、諏訪敦、宮本武典(モデレーター)※敬称略

参加費:無料(但し、別途入場料が必要)*

定員:60名(事前申込制・先着順)

会場:WHAT MUSEUM(〒140-0002 東京都品川区東品川 2-6-10 寺田倉庫G号)

主催:WHAT MUSEUM

参加方法:
オンラインチケットサイトから[不死と絵画とわたしたち]付きチケットをご購入ください。

※11月14日17:00 販売開始


■プロフィール

藤野可織(ふじの かおり)

小説家。2006年「いやしい鳥」で第103回文學界新人賞(「いやしい鳥」河出文庫)、2013年「爪と目」で第149回芥川龍之介賞(「爪と目」新潮文庫)、2014年「おはなしして子ちゃん」(講談社文庫)で第2回フラウ文芸大賞を受賞。近作に「来世の記憶」(KADOKAWA)、「ピエタとトランジ」(講談社文庫)、「青木きららのちょっとした冒険」(講談社)など。

 

赤坂憲雄(あかさか のりお)

民俗学者。1953年東京都生まれ。東京大学卒。著書に、「異人論序説」(ちくま学芸文庫)、「境界の発生」(講談社学術文庫)、「排除の現象学」、「東北学/忘れられた東北」、「岡本太郎の見た日本」、「象徴天皇という物語」(岩波現代文庫)、「武蔵野をよむ」(岩波新書)、「性食考」、「ナウシカ考」、「いくつもの武蔵野へ」(岩波書店)、「奴隷と家畜」、「定本 柳田国男の発生」(青土社)、「災間に生かされて」(亜紀書房)など。

 

 

諏訪敦(すわ あつし)

画家。1967年、北海道生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻油絵コース修了。1994年に文化庁芸術家派遣在外研修員としてスペインに滞在。1995年にスペインの第5回バルセロ財団主催 国際絵画コンクールにて大賞受賞。2018年より武蔵野美術大学造形学部油絵学科教授。主な展覧会に「諏訪敦絵画作品展 どうせなにもみえない」(諏訪市美術館、2011年)、「諏訪敦 HARBIN 1945 WINTER」(成山画廊、2016年)、「諏訪敦 眼窩裏の火事」(府中市美術館、2022年)ほか。

 

宮本武典(みやもと たけのり)

キュレーター。東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻准教授。アーツ前橋チーフキュレーター。1974年奈良生まれ。キュレーションした主な展覧会に「石川直樹 異人 the stranger」(2012)、「隈研吾 石と木の超建築」(2020)、「new born 荒井良二」(2023~)、「山縣良和 ここに いても いい」(2024)などがある。現在、アーツ前橋で2026年1月開幕の「向井山朋子 Act of Fire」をキュレーション中。「山形ビエンナーレ」など芸術祭の立ち上げも手がけており、前橋国際芸術祭2026プログラムディレクターに就任。

 

【「諏訪敦|きみはうつくしい」について】

現代日本の絵画におけるリアリズムを牽引する画家、諏訪敦。卓越した描画技術で対象に肉薄する諏訪の作品は、徹底した取材に裏付けられ、近年では戦争で亡くなった人々や、神話や古典文学の登場人物など、不可視な存在を描くリサーチプロジェクト型の絵画制作が高く評価されています。本展は、最新の大型絵画「汀にて」を中心に、そこに至るまでの画家のクロニクルを、過去の主な作品群とともに物語っていきます。

コロナ禍にはじまったアトリエでの内省と孤立、戦争や災害で揺らぐ外界をよそに、母を介護し看取るまでの静かな日々の中で、「人間を描きたいという気持ちを徐々に失っていった」と語る諏訪。本展は、稀代の肖像画家が再び人間を描けるようになるまでの克服の過程を開示するドキュメンタリーであり、精緻な眼と指を持つ故に「見ること、描くこと」を己に厳しく問い続けてきた諏訪の、現在進行形の思索と創造を紹介する展覧会です。