トークイベント「ゾンビ化する社会」 で絵画を考える 諏訪敦×中野信子
本企画は、2025年9月11日(木)より開催する「諏訪敦|きみはうつくしい」に関連したトークイベントです。
「諏訪敦|きみはうつくしい」は、諏訪敦にとって約3年ぶりとなる大規模な個展で、2025年9月11日(木)から2026年3月1日(日)まで開催します。
新作の静物画や肖像画を含む約80点を展示し、現在に至るまでの制作活動の変遷を多角的に紹介します。
諏訪は、美術史や技法・材料の研究にとどまらず、歴史学、民俗学、臨床医学など多様な分野のリサーチを作品に取り入れてきました。
本展では、その活動をより深く読み解くため、ゲストを招いたトークイベントを展開してまいります。
本イベントでは、脳科学者の中野信子をゲストに迎え、「ゾンビ」と「閃輝暗点(せんきあんてん)」という2つのキーワードから、絵画と社会、そして視覚の関係性について掘り下げます。
諏訪は自身の写実的な絵画表現を「ゾンビ化した絵画様式」と形容します。
どんなに表面をなぞっても本質には触れられないと悲観しながらも、徹底したリサーチを行い、不在の対象をも描き続けています。
一方、中野は2025年7月に刊行された共著「ゾンビ化する社会 生きづらい時代をサバイブする」(著:中野信子/岡本健)において、「ゾンビ」というメタファーを通じて、現代社会における人間の行動や思考パターンを読み解いています。
両者がそれぞれの専門分野から「ゾンビ」という概念をどう捉えているのか、そしてそれが芸術や社会の問題といかに接続されうるのかについて、分野を越えた対話を展開します。
さらに、両氏に共通する視覚現象「閃輝暗点」にも注目します。諏訪は長年この現象に悩まされ、それが絵画制作に大きな影響を与えてきたと語っており、中野も同じ症状を経験する立場から共感を示しています。視覚の変容が知覚や創作にどう作用するのかを考察します。
イベントには、本展の展示構成を担当した宮本武典をモデレーターに招き、中野の本展への所感や、展示空間がどのように見えているのかを深堀りします。
異なる分野の第一人者である2人の対話を通じて、本展をより深く楽しんでいただく機会を提供いたします。
【開催概要】
タイトル:
「ゾンビ化する社会」で絵画を考える
日時:
2025年9月28日(日)18:00〜19:30
登壇者:
中野信子、諏訪敦、宮本武典 (モデレーター)※敬称略
参加費:
無料※別途入館料必要
定員:
40名(事前申込制・先着順)
会場:
WHAT MUSEUM(〒140-0002 東京都品川区東品川 2-6-10 寺田倉庫G号)
主催:
WHAT MUSEUM
参加方法:
イベントの参加には、参加お申し込みと入館料(セット[展覧会+建築倉庫チケット]ほか)の購入が必要です。
WHAT MUSEUMオンラインチケットサイトより、《「ゾンビ化する社会」で絵画を考える》お申込みページをご確認ください
①参加申込み
↓
②仮予約完了
↓
③チケット購入
↓
④予約確定
の流れとなります。
【中野信子(なかの のぶこ)プロフィール】
脳科学者/医学博士/認知科学者。1998年東京大学工学部応用化学科卒業。
2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。
2008年フランス国立研究所にて博士研究員として勤務。
2010年に帰国。研究・執筆を中心に活動。
2015年東日本国際大学教授に就任、2020年京都芸術大学客員教授に就任、2022年森美術館理事就任。
現在、脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行っている。
科学の視点から人間社会で起こりうる現象及び人物を読み解く語り口に定評がある。
【諏訪敦(すわ あつし)プロフィール】
画家。1967年、北海道生まれ。
武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻油絵コース修了。
1994年に文化庁芸術家派遣在外研修員としてスペインに滞在。
1995年にスペインの第5回バルセロ財団主催 国際絵画コンクールにて大賞受賞。
2018年より武蔵野美術大学造形学部油絵学科教授。
主な展覧会に「諏訪敦絵画作品展 どうせなにもみえない」(諏訪市美術館、2011年)、「諏訪敦 HARBIN 1945 WINTER」(成山画廊、2016年)、「諏訪敦 眼窩裏の火事」(府中市美術館、2022年)ほか。
【宮本武典(みやもと たけのり)プロフィール】
キュレーター。東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻准教授。アーツ前橋チーフキュレーター。1974年奈良生まれ。
キュレーションした主な展覧会に「石川直樹 異人 the stranger」(2012)、「隈研吾 石と木の超建築」(2020)、「new born 荒井良二」(2023~)、「山縣良和 ここに いても いい」(2024)などがある。
現在、アーツ前橋で2026年1月開幕の「向井山朋子 Act of Fire」をキュレーション中。「山形ビエンナーレ」など芸術祭の立ち上げも手がけており、前橋国際芸術祭2026プログラムディレクターに就任。
【「諏訪敦|きみはうつくしい」について】
現代日本の絵画におけるリアリズムを牽引する画家、諏訪敦。
卓越した描画技術で対象に肉薄する諏訪の作品は、徹底した取材に裏付けられ、近年では戦争で亡くなった人々や、神話や古典文学の登場人物など、不可視な存在を描くリサーチプロジェクト型の絵画制作が高く評価されています。
本展は、最新の大型絵画「汀にて」を中心に、そこに至るまでの画家のクロニクルを、過去の主な作品群とともに物語っていきます。
コロナ禍にはじまったアトリエでの内省と孤立、戦争や災害で揺らぐ外界をよそに、母を介護し看取るまでの静かな日々の中で、「人間を描きたいという気持ちを徐々に失っていった」と語る諏訪。
本展は、稀代の肖像画家が再び人間を描けるようになるまでの克服の過程を開示するドキュメンタリーであり、精緻な眼と指を持つ故に「見ること、描くこと」を己に厳しく問い続けてきた諏訪の、現在進行形の思索と創造を紹介する展覧会です。