展示/アート
諏訪敦|きみはうつくしい
2025年9月11日—2026年3月1日
本展は、諏訪敦にとって約3年ぶりとなる大規模個展です。
新作の静物画や肖像を含む約80点を展示し、現在に至るまでの制作活動の変遷を多角的に紹介します。
現代日本の絵画におけるリアリズムを牽引する画家、諏訪敦。卓越した描画技術で対象に肉薄する諏訪の作品は、徹底した取材に裏付けられ、近年では戦争で亡くなった人々や、神話や古典文学の登場人物など、不可視な存在を描くリサーチプロジェクト型の絵画制作が高く評価されています。
本展は、最新の大型絵画「汀にて」を中心に、そこに至るまでの画家のクロニクルを、過去の主な作品群とともに物語っていきます。
コロナ禍にはじまったアトリエでの内省と孤立、戦争や災害で揺らぐ外界をよそに、母を介護し看取るまでの静かな日々の中で、「人間を描きたいという気持ちを徐々に失っていった」と語る諏訪。本展は、稀代の肖像画家が再び人間を描けるようになるまでの克服の過程を開示するドキュメンタリーであり、精緻な眼と指を持つ故に「見ること、描くこと」を己に厳しく問い続けてきた諏訪の、現在進行形の思索と創造を紹介する展覧会です。
【本展覧会の見どころ】
■約3年ぶりに開催する大規模個展
ヌードと頭蓋骨を組み合わせた初期の傑作、亡き人々を遺族からの依頼で描いた肖像画、諏訪自身の家族を見つめたシリーズなど、代表作から最新作まで約80点を展示。
そのうち約30点は、本展のために制作した静物画をはじめとする初公開作品です。また本展は宮本武典が展示構成を担当し、展示室を5つのテーマに分け、諏訪の画業の変遷を多角的に紹介します。
■最新作の大作「汀にて」・静物画でも肖像画でもない新境地
本展のメインビジュアル作品「汀にて」は、新型コロナウイルス感染拡大により、モデルを使った対面の制作ができなくなった諏訪が、家族を介護しながら自宅アトリエで進めてきた静物画研究の集大成です。
コロナ禍以降「人間を描きたいという気持ちを失ってしまった」と語る諏訪。最新作「汀にて」は、アトリエで見出した材料(古い骨格標本、プラスター、外壁充填材など)でブリコラージュした人型(ひとがた)を描いた大型絵画です。
本展では絵画のモチーフとなった人型と、その制作途中を記録した素描もあわせて展示いたします。
■アトリエでの制作風景を記録したドキュメンタリー映像
「汀にて」の制作過程に密着し、記録したドキュメンタリー映像を上映します。さまざまな画材、モチーフ、書籍に囲まれたアトリエの風景や、諏訪の緻密な作画プロセスを美しい映像でご覧いただけます。
■藤野可織の小説と諏訪敦の絵画のコラボレーション
芥川賞作家の藤野可織が、静物画の制作に没頭する諏訪のアトリエを度々訪問し、その絵の印象をもとに掌編小説を書き下ろします。小説はハンドアウトに印刷して本展の来場者に配布します。
諏訪が「死んで静まっているもの」と語る静物画たちがどんな物語となるのか、絵画と文芸のコラボレーションにご期待ください。
■新作や展示風景を記録した図録を出版
展示風景や新作の制作過程を収録した図録を会期中に出版予定です。
宮本武典による解説や、藤野可織による掌編小説も収録し、諏訪芸術の魅力を余すところなく収めた図録によって、本展を紙上に再現いたします。
【追補編・掌編小説「さよなら」】
本展の開催にあわせて、⼩説家・藤野可織が執筆した掌編⼩説「さよなら」を刊⾏し、ハンドアウトに印刷して全ての来場者に渡します。
この絵画と⽂芸のコラボレーションは、諏訪⾃⾝が「ゾンビ化した絵画様式」と語る、古典技法を駆使した写実的な絵画表現から、現代を舞台にした新たな物語を⽣み出していく試みです。
藤野可織(ふじの かおり)プロフィール
小説家。2006年「いやしい鳥」で第103回文學界新人賞(「いやしい鳥」河出文庫)、2013年「爪と目」で第149回芥川龍之介賞(「爪と目」新潮文庫)、2014年「おはなしして子ちゃん」(講談社文庫)で第2回フラウ文芸大賞を受賞。
近作に「来世の記憶」(KADOKAWA)、「ピエタとトランジ」(講談社文庫)、「青木きららのちょっとした冒険」(講談社)など。
【諏訪敦(すわ あつし)プロフィール】
画家。1967年、北海道生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻油絵コース修了。1994年に文化庁芸術家派遣在外研修員としてスペインに滞在。1995年にスペインの第5回バルセロ財団主催 国際絵画コンクールにて大賞受賞。
2018年より武蔵野美術大学造形学部油絵学科教授。主な展覧会に「諏訪敦絵画作品展 どうせなにもみえない」(諏訪市美術館、2011年)、「諏訪敦 HARBIN 1945 WINTER」(成山画廊、2016年)、「諏訪敦 眼窩裏の火事」(府中市美術館、2022年)ほか。
- 会期
- 2025年9月11日㊍ー2026年3月1日㊐
- 会場
- WHAT MUSEUM
1F, 2F
(〒140-0002 東京都品川区東品川 2-6-10 寺⽥倉庫G号) - 開館時間
- ㊋—㊐ 11時 — 18 時(最終入館 17 時)
休館日
月曜日(祝日の場合、翌日火曜休館)
年末年始(12月29日㊊ー1月3日㊏)
※1月5日㊊は開館 - 入場料
-
- 一般
- 1,500円
- 大学生/専門学校生
- 800円
- 高校生以下
- 無料
- 本展には一部、裸像を含む作品が展示されています。入場に際して、事前にご了承いただきますようお願いいたします。
- 招待チケット・招待状をお持ちの方、障がい者手帳をお持ちの方と介助者の方(1名様まで)は無料でご入場いただけます。
- 招待チケット・招待状をお持ちの方は、ご入館の際にご提示ください。
- 障がい者手帳をお持ちの方とその付添者1名は、ご入館の際、障がい者手帳等をご提示ください。
- 学生の方は、ご入館の際、学生証をご提示ください。
※チケットはオンラインにて事前購入可能
※本展会期中に何度でも入場できるパスポートを販売
展覧会パスポート 2,500円
※会期中、当ミュージアム内にある「建築倉庫」では、建築家や設計事務所からお預かりした600点以上の建築模型を保管しており、その一部をご鑑賞いただけます。
料金:建築倉庫 入館料 900円、セットチケット(本展入場料+建築倉庫入館料)2,000円ほか
<オンラインチケットの予約方法>
オンラインチケットは毎月第一火曜日発売予定です。
ご購入はこちらから
【関連プログラム】
諏訪氏の制作は、美術史や技法・材料の研究にとどまらず、歴史学、民俗学、臨床医学など多様な分野のリサーチを取り入れながら進められています。会期中は、諏訪氏とゆかりのある専門家を迎え、絵画表現を多角的に読み解くトークイベントなどを開催します。詳細は順次発表いたします。
【音声ガイドのご案内】
WHAT MUSEUM 公式アプリをお手持ちのモバイル端末へダウンロード頂くと、音声ガイド(無料)を館内で視聴頂けます。展示作品の解説や展覧会の見どころを分かりやすくご紹介します。
主催:WHAT MUSEUM
企画:WHAT MUSEUM、宮本武典(東京藝術大学准教授)
特別協力:藤野可織
協力:成山画廊
後援:品川区