ALTEMY賞
| A_RANGE |
| HIINA NOHARA + DREW HART [野原 秀奈、Drew Hart(ドリュー・ハート)] |
模型はそれ自体で完結した表象ではなく、異なるメディア間の翻訳の中で変化し続ける一時的な状態である。本作品は、その翻訳過程で生まれる揺らぎや不確定性を通して、模型に新たな解釈が重ねられていく過程を可視化する。

展覧会「波板と珊瑚礁 ‐ 建築を遠くに投げる八の実践」の関連企画である本コンペティションでは、「近くにあるものと遠くにあるもの」をテーマに、建築のあり方や社会との関係を模型で表現するアイデアを募集しました。審査は展覧会に出展中の建築家8組が担当。テーマの体現性、視点の転換、建築・社会への問い直し、アイデアの実現性などを総合的に評価し、国内外から寄せられた応募作品の中から受賞作品を選出しました。
| A_RANGE |
| HIINA NOHARA + DREW HART [野原 秀奈、Drew Hart(ドリュー・ハート)] |
模型はそれ自体で完結した表象ではなく、異なるメディア間の翻訳の中で変化し続ける一時的な状態である。本作品は、その翻訳過程で生まれる揺らぎや不確定性を通して、模型に新たな解釈が重ねられていく過程を可視化する。
| 意味の向こう岸で ーBeyond the Shore of Meaning |
| 熊田 英梨嘉 / Erika Kumada |
Villa Savoyeの一枚のフィルムから始まる、五つの作品。それらは世界の秘密に触れようとする際の〈視点の差異〉であり、結果として一つの建築に向かう〈予感の集積〉でもあった。意味の向こう岸、朧気な家。
世界の中に表出しているもの、隠されているもの、その痕跡や予兆に対する眼差しが自身の関心と重なり共感しました。実際に訪れたコルビュジェのサヴォア邸で自身が撮影した写真を基に、自分自身の手つきで、身近な素材を用いて既存のフレーミングを再構成することにより意味のずらしを起こしていることに、自分と建築の距離をひとつひとつ丁寧に測り直す態度が表れていると感じました。展示ではここに、建築の外界にある風景やイメージや出来事といった、より遠くにあるとされているものたちがどう組み込まれその関係が表現されるのかを見たいと思いました。
応募作全体を通して共感できる作品が多く、審査しながらむしろ励まされる想いでした。自分を主語としながら、社会や生活の中で気になること、抱えていることを手探りに手繰り寄せている様子は、見ている世界やそれに対する自身の捉え方を可視化する方法として模型を用いることの可能性を感じさせてくれました。
| いちぶんのご模型 |
| 大田 祥悟 |
「型を模す」と書いて模型という。
対象物を抽象化しスケールダウンして表現されるものから、スケールを拡大し、より具体化させて作られるものへ。この反転した操作の中に、模型のさらなる可能性を探る。
一般的に建築模型は縮尺を小さくしていくことにより抽象化や情報の選択が生じますが、本作品が提案する縮尺を大きくしていく行為により何が起きるのか、興味を惹かれました。5倍にすることで何が抽象化されるのか、また、情報量は増えるものの、例えば引き延ばされた素材は実物と全く一緒のものにはならないため結果的に具体化と抽象化が同時に起きるのではないか、と想像が膨らみ、非常に面白いコンセプトと感じました。
全体的に面白いアイデアが多く、様々な軸や視点での評価が可能だったため難しい審査でした。自身のアイデアを理解していることを重視し、アイデアがしっかりと文章で表現されている作品を選出しました。
| 編むこと |
| 藤下 彩 |
強くて、丈夫で、安心できる家に住みたいと思っている。けれども、私をとりまく生活は、もっと曖昧で柔らかく、形をもたない。野菜室で眠る腐りかけの玉ねぎも、作りかけの編み物も、どんな形になるかわからず、そこにいる。伸ばしてみたり、ほどいたり。
ただ、今日も編み続ける。
細長い糸を編み続け、大きな面をつくる編み物は、小さな業務の集積で大きい建物をつくる設計と通じるところがあると感じています。図面をスケールレスな編み図として表現している点にも、大きなものをつくる可能性を感じられました。
模型をつくることを前提としているコンペであるため、手が届くアクチュアルな作品をつくるということを意識させられました。その中で、印象に残った作品には少なからず模型に対する自己言及的な要素があったように思います。その部分を意識的に表現している作品を選出しました。
| 柔らかい構造 |
| 秋本 寛太 |
裏返しの靴下に、ピザのチーズは伸びて固まり、世界地図を広げて透かして見た。
見慣れたかたちが、ふいに輪郭を失い、思いがけない動きを見せる。
ふにゃふにゃしたシリコンの模型には、その戸惑いによく似た感触がある。
公衆トイレや立体駐車場といった街角の建物を題材にして、その模型をシリコンで作って挙動を観察してみるという提案。プレゼンテーションでもシミュレーションでもない、オブジェとマケットの間を振動するような模型のたたずまいを想像してワクワクしました。「もし建物が柔らかかったなら」どうなってしまうのか。私も気になります。
たくさんの魅力的な案の中から、模型が表現の手段にとどまっているのではなく、模型でしか起こりえない発見や検証を試みようとしている作品に注目しました。「提案の重心に模型があるかどうか」を個人的に大切な基準として審査させていただきました。
| 紙を折る、月を測る |
| モニカ [井出 達也、鳥山 亜紗子、尾花 日向我] |
「紙を42回折ると月に届く」という話を起点に、月までの距離を身体へ引き寄せる二つの模型を制作した。大きな紙を限界まで折り重ねる経験と、完成し得ない最終形のオブジェによって、月へ至ることをめぐる想像と現実とのあいだを往還する。
紙を折るという指先での行為により、地球を飛び越え途方もない距離の先にある月にまで到達してしまうという、ともすればリアリティが感じにくい理論ですが、模型がそのスケールの隔たりを繋げてくれるのではないかと思える案でした。模型化することで距離を身体化するという提案にとても共感でき、今回のテーマ「近くにあるものと遠くにあるもの」に正面から応えている作品だと感じました。
今までに無いような非常に特殊なコンペティションでしたが、今回のテーマに沿ってゼロから考えて提案しているアイデアに魅力を感じました。抽象的なアイデアや概念と模型としての実現可能性の両立が難しかったと思うが、二者のバランスが取れている作品を選出しました。
| どこかの都市の模型 |
| 清水 章太郎 |
衛星データから生成した粗い都市3Dを模型化し、遠くから把握された都市像が、近づくほど崩れ、剥がれ、見失われていく過程を表現する。都市の「遠さ」と「近さ」の関係を問い直す作品である。
模型をつくるという行為を通してあるもののスケールであったり物質的状態を別のものに変換するとどういう効果が生まれるか、という視点で選出しました。本作はもともとはフィジカルな状態で存在する都市をマップのデータとしてデジタル化したものをもう一回フィジカルに戻すとどうなるか、という試みで、実現したら非常に面白そうだと感じました。
一般的な建築模型ではないものを求めるテーマだったため、その解釈で苦労した応募者が多かったと思います。その分本当に色々な方向性の作品が集まり、各応募者がよく考えている提案が多かったです。
| 世界団地 |
| 沼宮内 さつき |
漫画のコマに描かれたものたちを一つのスケールに縛らず、360度等しく繋ぎ直してみる。バラバラに引き裂かれた世界を同時に見られない私たちの肉体を超えて、一方向の物語ではない、意図しない関係性がその場に立ち上がります。
文章が良く、マンガで表現されたビジュアルとしてもアイデアシートの完成度が高い作品。テーマ「近くにあるものと遠くにあるもの」に対する視点がしっかりと伝わるビジュアルで、破綻せずに成立していて楽しく拝見しました。三次元の模型になったときにどう表現されるのか期待しています。マンガのコマの枠内でものをフレーミングして描いている点は、「Prop」における模型で街を見る視点に通ずるものがあり興味があります。
全体を通して、「近さ」と「遠さ」というテーマが色々な風に読み取れる大きなテーマであることを感じさせられました。大きさと異なり、何を中心に「近さ」を捉えるかが人によって違い、相対的な関係性として扱える。その中で、ひとつのものの中に遠さと近さが混ざっているような、矛盾を扱っている提案に特に魅力を感じました。
受賞者が提案内容をもとに制作した8つの模型が並ぶ、作品展を開催いたします。なお、展示会場では9月12日(土)まで来場者による一般投票を実施し、全8作品の中からオーディエンス賞「波板と珊瑚賞」を選出します。模型に込められた多様な思考に触れながら、建築の新たな可能性を考える機会を創出します。皆さまのご来場と投票を心よりお待ちしております。
| 会期 | 2026年8月4日(火)~2026年9月13日(日) |
|---|---|
| 会場 | WHAT MUSEUM 建築倉庫 |
| 開館時間 | 火曜~日曜 11:00~18:00(最終入館 17:00) ※月曜休館(祝日の場合、翌火曜休館) |
| 入場料 | 一般 900円、大学生/専門学生 700円、中高生 500円、小学生以下 無料 ※建築倉庫のチケットにてご鑑賞いただけます。 |
ALTEMYより審査員コメント
アイデアシートの文章がハイコンテクストで完成度が高く、模型も美しく印象的でした。建築の文脈にちゃんと紐づきながら、新しい概念を模索し、模型のメディアを使って思考実験している態度が、今回のコンペのテーマに対し真っ当に応えており評価に値すると感じました。
全体的に応募作品で示された思考の範囲がとても広く、見ごたえがありました。最終的に実際の模型を制作することが条件であるためか、AIをあまり感じさせず、マテリアリティやフィジカリティと対峙している作品が多い印象を受け、このコンペの枠組みの面白さを感じました。